サバイバル節約術


番外編 〜槍・アトラトル〜


槍・・・だけでなく、銛(もり)、ヤスも含みます・・・いわゆる刺突具。突き刺して使う道具。

ちなみにどれも似ています・・・違いは、
槍:陸の獣などを捕らえるのに使う。手に持ったままや投げて使う。
銛:海の魚やクジラなどを捕らえるのに使う。手に持ったままや投げて使う。
ヤス:水中で手に持って使う。


ヤス。
石器時代や縄文時代から使われていた刺突具・・・素人がネットで調べても出て来る情報はとても少ない・・・そんな中・・・エイの尾にあるトゲで一本ヤスが作られたとの情報を見つけました。



エイならば捕った事ある!! 早速挑戦!!



真っ直ぐな長い木の枝はとても少ない・・・今回見つけたのは、山の北側。



ヤブツバキの枝を採取しました。
切り出した枝。長さ135cm。太さは先の方が1cm、元の方が1.5cm程度です。
エイのトゲ1本では、それほど強度が無いので柄もこの程度で良いと思いました。
ヤス作りにヤブツバキの枝が合うかどうかは全くの不明です。ただ、ち密な材質なので浮力は強すぎず、そこそこ強度もあると思いました。



どのような仕組みでトゲを取り付けていたのか・・・全く分からなかったので、これは自己流。
木の枝に切れ込みを入れて差し込むだけでは必ずスッポ抜けてしまうだろう・・・トゲが入るように窪みを付けたら、ヒモで縛って両側から挟み込めるように考えてみました。
また、切れ込みを入れた左右方向へトゲが倒れてしまうのを防ぐために、押さえの木片(これもヤブツバキ)を添えました。



ヤブツバキの枝にエイのトゲと添え木を両側にセットしたら、フジの蔓で作ったヒモで強めに巻いて行き、シッカリ挟み込む事ができました。



とてもシンプルですが、完成したヤス。モリとしても使えるかな?
柄の長さ135cm。突き刺す先端部分は8cmです。
先端のエイのトゲや柄の強度を考えると30cmを超える魚を相手にするには少々不安です。
これは20cm程度の魚を対象にしたヤスとなりました。





アトラトル。
アボリジニが使う投槍器はウーメラと呼びますが、同じ構造です。
素手に槍を持って投げるよりも、もうひと関節増えたような・・・手に木の棒を持ち、その棒の先に槍をセットして投げると・・・素人でも簡単に遠くまで槍を飛ばす事が出来る優れもの。
ディスカバリーチャンネルで放送したサバイバル実験:“石器時代の生活”では、一発逆転。それまで食料が足らずにヘロヘロ状態だったものが、このアトラトルを使う事で獣を倒し、生活に余裕が生まれました。
“縄文人になる!”と言う本に僅かに載っていて気になり、“アウトドア・サバイバル技法”には、詳細な作り方も・・・これは一度投げてみたい!! 



今回は河原に大量に生えているアカメガシワの枝を使いました。
素材は特に限定されず、槍を投げれる程の強度のある木であれば何でも良いようです。
藪の中を探し回り、良さげな枝を見つけ、切り取ったのは少し長めに64cm。
両端は乾燥中に割れる可能性があるので切り捨てるつもりでした。



とりあえず・・・ある程度乾燥させたらずりずり・・・木の棒に突起があれば、アトラトル・・・そんなつもり・・・
実際、ネットを検索するとこの様な突起のものも見つかるのですが、槍をセットするのに少し時間が掛かります・・・上下左右前後に気を付けないとピッタリセット出来ないのです。



少し改良したもの。
槍の径が予め決まっていれば、アトラトルの突起部分を本体からどの程度離せばスムーズにセットできるか決まります。
写真は、突起部分を本体に近くなるように修正しました。槍の柄を本体傾斜部分に沿って滑らせて行けば、そのまま突起にセットできるのです。この方が全然楽♪



長めに切り出したアカメガシワの枝でしたが、投げやすそうと何も考えずに選んだこの湾曲・・・
沢山のアトラトルの写真を見たら、槍を直接掴まなくても、アトラトルにセットできるものも見つかったのです。
これだけ湾曲があれば・・・試しに突起とは反対側に槍をセットできる窪みを作ってみたら丁度良い!!
結局、切り出した枝そのままの長さ64cmのアトラトルになりました。




アトラトルに槍をセットした所。
槍は長さ150cm程になるので、斜め上方を保たないと外れてしまいます。
この角度でアトラトル本体だけを掴んで投げる事ができます。



一つ上の写真のように、槍はアトラトルにセットできるので、アトラトルだけを掴んで投げる事もできるのですが、やや不安・・・人差し指で軽く抑えるだけで完全に固定できます。親指は好みで好きなポジションへ。
力の入り具合は、やはり、アトラトル本体だけを掴んでいた方が上です。



槍。
左2本はこれから作る槍の素材。真っ直ぐな若木です。
採取したばかりで重い!これは削って乾燥させてから使います。
左から3本目はイタドリ。杖にもされるとても軽くて丈夫な素材ですが、長さを得るために長めに切り出すと、どうしても根元近くまで使う事になります・・・根元は直径2cm程にもなるので結構太い。
鏃や矢羽をつければまた違ったと思いますが、ちょっと太過ぎでした。
左から4本目は藪の中で見つけたシュロの木の葉柄。まっすぐでカラカラに乾燥していて、それなりに硬かったのですが、軽すぎて思わぬ方向へ向きを変えて飛んで行ってしまいました。
鏃や矢羽をつければ違ったかも知れません。
左から5本目はとても長く育ったセイタカアワダチソウ。これは、太さ・強度などとても良い感じでした。
一番右の2本は、細い篠竹。篠竹は根元も先端も太さがあまり変わらないので良いのですが、採取したばかりで重い! 乾燥させて軽くなればこれもかなり良いでしょう。


投げてみて・・・
槍は短すぎると不安定です。150cm程度かそれ以上あった方が良いでしょう。
何度か投げてみた所、右へ左へ・・・槍を真っ直ぐ前に向けても右へ左へ・・・槍に矢羽を付けず、ただの棒きれと言うのもあるでしょう・・・あれこれやってみて、槍だけでなく、肘も真っ直ぐ前方に向けると、何度投げても真っ直ぐ飛ぶようになりました。激簡単&単純。
ただ、実際の狩りで真正面を向いて投げるのは獲物に見つかって逃げられてしまう可能性も・・・難しいですが、狩りを想定するならば、屈んでサイドスロー的に投げる練習をするべきでしょう・・・
槍はまだ未完成状態ですが、何度も投げていると藪に紛れて失ってしまう・・・そこで、白いビニールを槍に巻き付けて投げたら目印になって探しやすいだけでなく、これが、投げた瞬間にシュルシュル〜っと音を立てて遠くへ飛んでいくのが気持ち良過ぎ!
飛距離は・・・未完成の重い槍でしたが、少しずつ飛距離が伸びて行き、50m弱程度は飛んだでしょう・・・
これ以上飛ぶと完全にヤブの中なので、これ以上は飛ばせないと言うのもありました。
結果、まずは成功!でしょう。何より投げていて楽しかった♪


槍がまだまだ未完成なので、これを作ったらまた実験してみます。







アトラトル改!
持ち手部分は皮を残した方が滑り止めになって良いだろうと思い、そのまま使ってましたが、やはり僅かに太いかな?
断面が縦に長い形のものもある・・・と、言う事で、持ち手部分周辺だけ両側面を削って僅かに薄くしました。
これにより持ちやすくなっただけでなく、突起の向きが見なくても分かるようになりました。
さらに・・・



削るほどに出て来た黒い木目。
これが、目と目の下に伸びる模様のよう・・・と、言う事で、突起の反対側にも同様に同じ形の模様を半田ゴテで焼きを入れ・・・さらにお遊びで上にも模様を・・・
突起が口ばしで、何となく鳥っぽいイメージになりました。

その他、首周辺を細く削ったり、全体的に丸みを帯びた感じにしました。



本体に手を加えたのは、ほんのお遊びです・・・
槍を本格的な物にしたい・・・前回は即席の槍だったのです。
手に入れた槍の素材をいくつか試して・・・もっとも良いものを1本作りました。
素材は恐らくシロダモ。気持ちの良いほどに真っ直ぐでしたが、極僅かに歪みはどうしてもある・・・
カラカラに乾燥させて枝を取り、皮を剥いたら、火で炙って真っ直ぐに補正しました。
槍の長さ159cm。拾ったワシの羽を2つに割いてヒモで縛って固定しました。
※先端の矢じりは危険なので付けてません。



今回は十分な広さのある河原の広場にて・・・槍をセット!!



目指すは・・・あの雲!! なんて。



今日は横風が強かったのですが、真っ直ぐ一直線に飛び、地面にサクッと刺さったり・・・
前回よりも大分長く、しかも羽付き・・・飛行もメチャ安定してました。
まだまだ完全フルスイングではありませんが、60m程は飛んだ感じです。
これは気持ち良い!!

アメリカでアトラトルの競技もあるようです。 ハマる気持ち分かる! 楽しい♪





鹿の角を何本かGetできたので、良さげな部分を使って銛(もり)を作ってみました。



天然物・・・あちこち湾曲して曲がってる・・・真っ直ぐな部分など、どこにもない!! えいやっと!!



曲がっている上に、中心部は中空・・・どうにかなるのか!?



なんどもなんども素材を見て、余分な部分に印を付けて取り除いて行きます・・・
ピラニア鋸でカット、鉄工ヤスリで削って・・・なんとか形を・・・



取りあえず、鹿角製の先端部分だけは完成♪

これは、縄文時代に作られていた鹿角製の離頭銛です。
後ろに燕の尾のような部分があるので、燕形銛頭とも呼ばれます。



作った銛頭にヒモを結ぶのですが、どうやったら正解!?
これが、どうやっても飛び出る!! 
ネットを検索しても、ヒモが収まる溝の様なものがある銛頭は見つからないのです・・・
結局、釣りでもよく使う、シンプルでありながら強度もあるチワワにしました。

さらに、柄に装着しないと使えない・・・銛頭が完成してから柄の素材探しをしたので、乾燥まで含めて時間が掛かりました・・・
そして、どうやって柄に装着させる!?
最初、柄の先端を細く削っただけ・・・銛頭の鹿の角は中空なので、差し込んだだけにしたのですが!
差し込む部分が長ければ、もっと安定したと思いますが、どうもいまいち・・・
で、思い付いたのが、上の写真の様に燕の尾部分も咥え込む様な形。
これは安定する! 





完成した銛。
銛頭は7.5cm、柄の長さは169cm。
この柄、ここまで長くて真っ直ぐ、そして緻密で重い(軽いと水中で浮力の影響を受けて扱い辛くなるはず)・・・これはなかなか良いです。

やっぱり、作っただけでは面白くない♪
離頭銛・・・刺したら鹿角製の頭部分が抜けて、獲物の体内で横向きになり、抜けなくなる・・・
これは銛頭とヒモが真っ直ぐな“I”字型から、銛頭が横向きになって“T”字型になるイメージです。

実際に生きている物で試すのが一番ですが、なんとなく・・・で、
あれこれ考えて思い付いたのが、買い物袋を何枚か重ねて中に大量の砂を入れたもの。
これはもちろん、砂が肉の代わり、重ねた買い物袋が皮の代わりです。

今回実験した場所は、河原です。
買い物袋は3枚重ねにし、砂を詰め、上の口はしっかり結びました。
砂は湿り気を帯び、どっしりと重く、しっかりしてました。



これにめがけて・・・えいやっ!!
柄を抜いたら・・・いくらヒモを引っ張ってもビクともしない!!
成功!! さてさて、中でどうなっているのだろうか・・・

※上の写真(動画)では、周りに石がゴロゴロしてますが、袋の中に入れたのは砂と、大きくても小指の先ほどの石が僅かに入っているだけ・・・面倒でしたが、ほぼ砂だけを詰めました。

刺し込む際の銛頭の向き(上下)は、燕の尾のある背中側が上に来る向きでした。
これが、どうなってるか・・・さてさて・・・



そ〜っと砂を掘っていくと・・・
結果、想像通り!!
ヒモを引っ張ると、尾が抵抗を受けて上側に、そして頭は下側に下がる、まさに想像通り、理想的な“T”字型で砂の中に留まっていました。

上の動画は、砂を掘って銛頭を確認した後、ヒモを引っ張ってます。




 

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