ひも。 ちょっとした道具作り、服や靴の補修など・・・自然に存在するものそのままでは、結ぶ時に折れてしまったり、乾燥すると割れてしまったりします。 ここでは、いろいろな植物から柔軟な繊維を取り出してみようと思います。 2012年秋。だんだんと枯れ葉が目立ち始め・・・食材も減ってくる頃・・・ 今の内に何かしようと思い立ち・・・紐作りをしてみました。 今回はヤブマオを使いました。これは人生初のヒモ作りです。 ヤブマオ。 カラムシ、ヤブマオ、アカソなど、強い繊維が取れ、縄文時代より服などに利用されてきました。 出来るだけ葉と葉の間の長いものが良いようです。 川原でやっと見つけたヤブマオは、ここにしかなかったので選択の余地はありませんでした・・・ 葉を落として広場まで運んで作業開始。 茎を折って皮部分のみを集めます。 秋も終わり頃・・・時期が悪かったのもあるかも知れません・・・良質の長い繊維は採れませんでした。 外皮はとても硬くなってました。 水に浸けて表面の肉を腐らせます。 写真上は、浸けて直ぐ、写真下は、半月後。 こまめに水を交換します。 今回はついうっかり長く浸け過ぎました。 丁寧に表面の腐らせた肉を取り除くと・・・白いとても丈夫な繊維が出てきます。 下の写真、広げた繊維の幅は約5ミリです・・・もの凄く細かな繊維です・・・ 取れた繊維をいくつかにバラしてから撚り(より)をかけます。 上手に繊維を取り出せなかったので、綺麗な白いひもではありませんが、 とても丈夫な紐ができました。 写真奥の濃い茶色の紐は、採取してまもなく作ったもので肉を完全に取りきれず、ゴワゴワ感も強いです。 その他の白に近いものは、もっと肉を腐らせて取り除く事が出来たので柔らかめです。 繊維を採取する時期を考えずに、急遽、実践し、数本の紐を採取する事ができました。 繊維を取るのに適した時期があると思うので、機会があれば、一番適した時期に、良質な材料を探して、再度、挑戦してみたいと思います。 2018年。 今まで色々な植物から繊維を頂いて来ました・・・今回は即席の繊維取りです。 沢山生えているヤブマオの中から太めの物を切り出しました。 いきなり曲げ折っても良いのですが、繊維が切れたりするので筒状の茎を軽くトントン叩いて行って縦2つに割り取ります。 皮を掴んだら引っ張って皮も繊維も一緒に取り出します。 あまり無いのですが、内側に硬い茎が残っていたらそぎ落とします。 外側の茶色の皮もそぎ落とします。 ナイフは進行方向へ刃を向けないように。90度よりやや寝かすように。 魚のウロコを包丁で取る要領です。 目の部分はポッコリ飛び出ています。これが乾燥すると硬い玉になって異物になります。 表面をそぎ落として薄くします。できれば軽く叩いて潰しておくと良いです。 1時間半後・・・ 洋服を作るにはまだまだ全然足りませんが、何か道具を作るには十分過ぎるでしょう。 これを乾燥させた後、湿らせてほぐしたら編み込んで紐にするのです。 ひも・・・と言うより、もっと丈夫なもの・・・ロープ作りにも使えるとても丈夫な繊維。 フジの繊維を取り出してみようと思います。 他の木にまとわり付いてぐちゃぐちゃ・・・です。 根元は腕ほどの太さがありますが、繊維を取り出すには直径1cm程度・・・指の太さ程度が良いです。 太さ1cmもあれば、そのまま大人がぶらさがってもビクともしません・・・ 皮の表面。 ゴツゴツ、ブツブツしたツルです。 ちなみにこちらはアケビ。同じような場所に生え、よく互いに絡まってます・・・ 右がフジで左がアケビ。 切り出したツル。 中心に芯があり、その周りに柔軟な繊維、さらに外側に皮があります。 まずは、皮と繊維を一緒に手で剥いて取り出します。 そのままでも剥けますが、軽く叩いてほぐすと剥きやすくなります。 ちなみに、水分を良く吸った5月頃が一番剥きやすい季節です。 ↑5月ならば、葉も付いているので、他のツル性植物との見分けが簡単です! 剥いた皮。 互い違いに枝の名残り・・・目があるので、なかなか長い皮は取れません。 このまま放置すると硬くなってしまうので、次の処理・・・煮込み易いように丸めて縛っておきます。 皮と繊維を取り分け易い様に、煮込みました。 (本格的に行なう場合は、灰汁で煮込みます。) イヤな匂いではありませんが、独特な匂いがします・・・ 皮を取り除こうとしてもうまく行きません・・・内側の白い繊維だけを摘んで取り出します。 写真は、手前の丸めた2つの繊維が取り出したもの。奥の茶色のものは皮です。 取り出した繊維を撚ったもの。 なかなか上手に撚れませんでしたが、やはり、経験を積めば少しずつ上達します・・・ 写真左側は上手に撚れました。 取り出した状態の平べったいままでは、撚ったつもりでも解けてしまいました。 出来るだけ繊維は解してから2つにまとめ、その2つそれぞれを時計回りに撚りながら2本を絡めて行きます。 当然、撚った繊維は元に戻ろうとするのですが、2本を同じ方向へ撚ることで、お互いに引っ掛かり・・・戻れない状態になるのです。 2017年。 釣り糸に使いたくて全く継ぎ目のない長い繊維を撚って作ったもの。 とても丈夫ですが、カラムシの繊維と比較したら全然かないませんでした。 こちらは、とても細い・・・“ひも”と言うより糸です。 クワゴ・・・色々な幼虫を調べていたら、桑の葉に小さなイモムシ・・・カイコよりもずっと小さいのですが、同じようにマユを作ることが分かり、後日、マユ探しに・・・ 幼虫は沢山居たのですが、見つけたマユは少しだけ・・・葉を包んで中にマユがありました。 薄い膜状の中に、マユがあります。 マユはセリシンという成分により糸同士がくっ付いています。 鍋に水とマユを入れて落し蓋をしたら、1分間煮ます。その後、鍋の湯の1/3程度の水を加えてさらに1分間沸騰させて終了。 写真は落し蓋のかわりに数枚のティッシュを投入してます・・・ 水を加えて湯の温度を下げたら、割り箸・爪楊枝などで表面をこすり、糸を取り出します。 上の写真は、なんとか糸の端を見つけて木の棒に巻き始めた所。 1mmの数百分の1と思えるほどの極細の糸で、風の無い部屋の中でも空中に舞い続けます・・・。 手がつるほど巻き続け・・・光沢のある木の棒に・・・まだまだ続く・・・ 1時間以上木の棒を回し続け・・・マユはコップの中で踊り続け・・・こんな感じに・・・ デジカメの顕微鏡モードで超拡大・・・透明&光沢のある極細の繊維が取れました。写真の下に僅かに写っているのが1mmの目盛り。画面上の比率で計算したところ、約0.031ミリでした。 これを利用するには相当な根性それなりの技術が必要でしょう・・・ 2018年。4年近く使い道を思いつかず放置してました・・・ 海藻でしおりを作り、ヒモを探していてふと目に入ったのです。写真上。 写真下は残った部分を撚ってヒモにしたものです。 7月下旬。カラムシ。 150cm程度に育っていたので採取しました。 採って葉を落としたもの。 水に浸けて2週間後。 この時期に2週間浸けてしまったのは長すぎだったのでしょう・・・ とても白い繊維が見えますが、ゴチャゴチャに絡まり・・・繊維同士はとても良く引っ付き引っ掛かり、バラけさせる事が出来ませんでした・・・ 根気良くあれこれやってみましたがどうにもならない・・・残念。 8月上旬。カラムシ。 またまた採取してみました。 表面の皮を剥くとこんな感じ。 全ての皮を取ったところ。 さらに内側の繊維を取り出してみたもの。 採った当日です。 フジの繊維を取り出すときと同じで、茶色の皮を剥こうとしても上手く行きません。 効率は大分落ちますが、内側の白い繊維だけを取ったもの。 撚ったところ。 太さ1mm程度のものも作ってみました。 ピンと張るとパンッ!!と張る感じです。 全く伸びず、とても固い・・・1mm程度ですが、強く引っ張ると皮膚に食い込みます。 これは強靭! ここで、ヒモを作るだけでなく、次のステップへ進む気になりました。 この強靭な繊維、弓の弦や釣り糸に使えます。 クズ。 写真は下側の茎・・・クズ藪の周辺でひと際太い茎を辿って採取してみました。 今回は2本ほど採取してみました。 採取したツルは茹でます。約30分。 茹で過ぎるとボロボロに、茹でが足りないと上手く剥けないようです。 半日程度水に浸けます。 2〜3日、ススキの上に載せてブルーシートなどで覆っておくのですが、そんな環境などない・・・ ビニール袋に入れて放置しただけ・・・発酵するので密閉せずに口は折り返しただけです。 刈り取ったススキを一緒に入れたらもっと良かったでしょう。 休みの関係で4日後になってしまいました・・・が、茹でがまだ足りなかったから良かったのか!? 中心の茎から皮を剥くのは簡単でしたが、表面の皮を剥くのが大変・・・ガンガンの強烈な日差しもあり、だいぶ大雑把な作業になってしまいました。 もっとも綺麗に剥けた部分です。透明感のある繊維。 写真では分かり難い・・・綺麗に剥けた部分にはシルクの様な柔らかな光沢がありました。 湖畔で見つけた杉の皮(繊維)。 一部、外皮も残っていましたが、殆どがその内側の繊維ばかり・・・どの程度風雨に晒されていたか分かりませんが、かなり毛羽立ってもしゃもしゃでした。 強く引っ張ると千切れるのであまり強くない繊維ですが、大量!! しかも繊維を取り出す苦労もなくいきなりGet!! 杉の繊維の縄。太さ1cm、長さ3m。 繊維が弱く大量!! と言う事で、繊維を太く選り分けて“ない”ました。 これはまさに縄!! これほどの太さ、長さは初です。 かなり毛羽立ってますが、やわらかくしなやかなのでロープとして十分使えます。 イグサ。 イグサと言えば畳。サバイバルのだいぶ初期の頃から身近にあったのですが、採取してそのまま編み込もうとすると割れてしまい・・・何度かトライしても・・・これはだめだ。で、後回しになっていました。 一度カラカラに乾燥させてから水に一昼夜以上漬けてから曲げてみたら・・・写真の様にシッカリしているのにとても柔軟な事に気付いたのが、2017年末!! カラカラに乾燥させてから水に浸け、丁寧に叩いてほぐしてみました。 それを5〜6本ずつにまとめたら縄に・・・これは良いです。 ワラ(稲)の縄のよう!! ワラが手に入らないので諦めていたものもこれならば作れるかも!! 大量に採取して長〜い荒縄を作ってみました。 今の所、使い道はありませんがいつか役に立つかも!? 即席の縄。 真っ直ぐ引っ張るとメチャ強靭なのに、曲げると切れ易くなる・・・これはどんな植物も同じ気がします。 これは厚みがあるから切れやすい・・・今まで何度も色々な植物で経験した結果・・・テコの原理が働いてしまうのです。 イグサでは柔らかいのでテコなのか分かりませんが、これに対処するには繊維以外のものを取り除くだけ・・・ イグサの葉を採ったら爪を立てて半分に割ったら、中の芯を取ってしまい、撚り易いように幾つかに割いてしまいます。 後は撚るだけ。ただ、生の物を使った即席なので、乾燥すると薄くなって隙間ができそうな気がしますが・・・ 即席としては強度十分!!思いっきり引っ張っても全く無理!! シュロの木から皮を幾つか頂いてきました。 作りたかったホウキを無事、作る事ができたあと、残った繊維は・・・ロープを作る事もあるとの情報から挑戦となりました。 シュロの皮はまるで布のように繊維が交差しているので、適度な幅で取り分けました。 シュロの縄。 シュロの繊維は水に強いので、水回りの道具に、補修に昔から利用されてきました。 太い縄は何本ものまとまった繊維で撚ったもの。 細い縄はシュロの繊維の中でも太い毛・・・鬼毛で撚ったものです。 1月下旬。シナダレスズメガヤ。 カラカラに乾燥していても、真っ直ぐ引っ張ると大人の力でも切れないほど強靭です。 これをワラのように使えないか・・・ ナイフでザクザク根元から切ったら、素材の選り分けなどせず、ザックリ掴んだらひたすら撚り込んでみました。 これはただの実験・・・でしたが、悪くない。 叩いてほぐさないと硬い部分もありましたが、これは使えます。 11月。 シナダレスズメガヤがあちこちにあり、まだ何とか緑が残っている枯れる寸前・・・ 長い穂を折り取って、そのまま割こうとしても上手く行かず・・・平らに潰すと簡単に割けました。 河原を歩きながら取って割いて・・・簡単、あっという間にこれだけ。 軽くて信じられない程に丈夫なヒモ(ロープ)になりました。 表面は光沢もあり見た目も良いです。 リュウゼツラン。ユッカ。 ネットでこの植物の葉から繊維を取る事が出来るとありました。 この硬い葉から繊維を取り出す方法は? 生のままや乾燥させたりしましたが、やはり芳しくない・・・ 他の素材同様に腐らせてみました。 こんな白い繊維が出て来ました。少し臭いです・・・ 乾燥させたらこんな感じ。この1本1本も幾つかの繊維の集まりです。 取り出した繊維でヒモを作ってみました。 柔軟&強靭な繊維です。これで服も作られたそうです・・・欲しい・・・数十時間では到底無理! 数百時間は必要でしょう・・・